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瞬発力とは 〜プライオメトリクス、SSC〜

 

瞬発力とは短い時間に大きな力を発揮する力を言います。瞬発力は筋パワーと同義語です。瞬発力(筋パワー)は、筋力と筋の収縮速度を掛けたものになります。

 

 瞬発力  = 筋力(F [N])× 収縮速度(V [m/s])

 (筋パワー)

 

瞬発力(筋パワー)を表す指標として、垂直跳や立幅跳、ウェイトリフティング(クリーン&ジャーク、スナッチ)、スクワットジャンプ(重量の選択が重要)などが挙げられるでしょう。

トップアスリートの中でも、とりわけウェイトリフティング選手の垂直跳の記録が抜きん出ていることをご存知の人も多いでしょう。ウェイトリフティング選手は瞬発力(筋パワー)を競う種目と言っても過言ではないかもしれません。また、陸上競技の短距離のトップ選手(特に100m、200m)も非常に高い瞬発力(筋パワー)を示します。

一方で、もし仮に筋力が非常に高く、高重量のスクワットを挙げられる人がいたとしても、スクワットの動作に似た動きである垂直跳において必ずしも高く跳べるというわけではありません。

上で説明した式を用いて説明すれば、Fが大きいもののVが小さければその掛け算が小さくなってしまうからです。

(※もちろんそういった選手でFだけでなくVも大きい人=瞬発力が高い人はたくさんいます。先程の例で上げたように、ウエイトリフティング選手はスクワットやデッドリフトも信じられないほどの高重量を挙げることができます。)

 

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ここで少し極端かもしれませんが次の例を考えてみましょう。​

・A選手(スクワットのベスト:180kg)

・B選手(スクワットのベスト:120kg)

(二人の身長・体重・体組成を同じとします。)

​このとき、スクワットで60kgも劣っているB選手が垂直跳や立幅跳などの瞬発系の種目でA選手に勝ってしまう場合があります。(垂直跳や立幅跳の技術においも二人に差はないとしましょう。)

この理由としては、垂直跳や立幅跳で求められる短い時間では、B選手のほうが大きな筋力を発揮することができ、B選手のほうが股関節・膝関節・足関節の伸筋群の収縮速度が大きかった』からと言えるでしょう。

B選手はスクワットで要求されるような比較的長い時間で大きな力を発揮する能力はA選手に劣っていたものの、スクワットよりも遥かに短い時間で力を発揮する能力はA選手より長けていたということです。

 この例のように、筋力だけ伸ばしても瞬発力が伸びない、ということは頻繁に起こり得ます。どれほど筋力が大きくても早い動きができなければ、瞬発力(筋パワー)は大きくなりません。

 

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皆さんの周りでも、スクワットやデッドリフトでは勝っている選手に瞬発系の競技では負けてしまうことがあるのではないでしょうか。もちろんその逆もあるでしょう。

さて、瞬発力を伸ばすためには筋力のみならずスピードが重要であることを理解していただけたでしょうか。

 

瞬発力を語る上でも、瞬発力を高める上でも切っても切り離せない関係にあるのがプライオメトリクスSSCといった用語です。

 

プライオメトリクス(plyometrics)とは筋肉が最大の力を発揮するまでの時間を最短にするための活動を指します。

 

また、SSC(伸張–短縮サイクル、ストレッチショートニングサイクル)とは、伸ばされた筋肉や腱が縮もうとする力を利用した動作のことを言います。縮もうとする力は弾性要素と伸張反射によって生み出されます。そして、このSSCを利用して行うトレーニングのことをプライオメトリクストレーニングと呼びます。

 

SSCには2つの作用があります。

 

  • 1つ目が、筋肉が急激に引き伸ばされた時に引き千切れない為に備わっている筋の防衛本能です。これを伸張反射と言います。

  • 2つ目が、筋肉と腱の弾性エネルギーです。これはゴムを想像していただければ分かりやすいかと思います。筋肉は意識的に収縮出来るゴムであり、腱は反対に意識的には収縮出来ないゴムだとお考えください。強いゴムであれば、強く引き伸ばされる程に素速く収縮します。

 

筋肉の収縮が腱よりも強ければ、腱の方が強く引き伸ばされて腱の方に弾性エネルギーが貯まります。この時の筋肉はアイソメトリック収縮(筋肉の長さが変わらない収縮)の様な状態になるので、無駄なエネルギーを使わずに腱に蓄えられた弾性エネルギーで身体を動かすことが出来るのです。

 

つまり、筋肉はスプリントの接地時やジャンプのしゃがみ込む時に結果として引き伸ばされますが、引き伸ばされない様に事前に準備して収縮する事で効率的なSSCが実現出来るという事です。

 

SSCは瞬発力を高める上でうまく利用せずにはいられない重要な要素です。普段のトレーニングにSSCを入れるメリットとしては、瞬発系の競技への特異性が高まるということが挙げられます。また、プライオメトリスやジャンプトレーニングの際にもSSCを意識して使えるようになれば、ジャンプ力の向上にも繋がります。

 

では具体的に普段のスクワットなどのトレーニングにSSCをどのように取り入れるのが良いのでしょうか?

 

まず、素速くしゃがみ込んでネガティブ局面の時間を極力短くします。さらに慣れてきたら足を浮かせて重力に任せてしゃがみ込める様になります。これをドロップ(落とす)スクワットと言います。

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